家庭用および業務用の低温貯蔵機器である冷蔵庫・冷凍庫では、「冷凍効率への適応性」と「環境規制への適合性」を中心に、冷媒選定において継続的な変化が見られてきました。各段階における主流の種類と特性は、機器のニーズと高い整合性を保っています。
初期の主流:「高効率だが有害性も大きい」CFC冷媒の適用
1950年代から1990年代にかけて、R12(ジクロロジフルオロメタン)は絶対的な主流冷媒でした。機器への適応性という点では、R12の熱力学的特性は低温貯蔵のニーズに完全に適合し、標準蒸発温度は-29.8℃で、冷蔵庫の冷蔵室(0~8℃)と冷凍室(-18℃以下)の温度要件を容易に満たしました。さらに、R12は化学的安定性が非常に高く、冷蔵庫内の銅管、鋼管、鉱物系潤滑油との相性も抜群で、腐食や配管の詰まりをほとんど引き起こさず、10年以上の機器寿命を保証しました。
R12はオゾン層破壊係数(ODP)が1.0(オゾン層破壊係数の指標)、地球温暖化係数(GWP)が約8500と、強力な温室効果ガスです。モントリオール議定書の発効に伴い、1996年以降、新規に生産される冷凍機におけるR12の使用は世界的に段階的に禁止されています。現在、一部の古い機器にのみ残留冷媒が残っており、メンテナンス時に代替冷媒が見つからないというジレンマに直面しています。
移行段階:HCFC冷媒による「部分的代替」の限界
R12の段階的廃止への対応として、R22(ジフルオロモノクロロメタン)が一部の業務用冷凍庫(コンビニエンスストアの小型冷凍庫など)で短期間使用されていました。R22の利点は、熱力学的性能がR12に近いこと、冷凍庫のコンプレッサーや配管設計に大きな変更を加える必要がないこと、そしてODP値が0.05に低下することでオゾン層破壊能力が大幅に弱まることです。
しかし、R22には明らかな欠点もあります。GWP値が約1810と依然として高温室効果ガスに属し、長期的な環境保護の潮流に合致していません。また、R22の冷凍効率(COP)はR12よりも低く、家庭用冷蔵庫に使用すると消費電力が約10~15%増加するため、家庭用冷蔵庫の主流にはなっていません。2020年には世界的なHCFC冷媒の段階的廃止が加速され、R22は冷蔵庫・冷凍庫分野での用途から基本的に撤退しました。
I. 現在の主流冷媒:HFCと低GWPタイプのシナリオ固有の適応
現在、市場における冷蔵庫の冷媒選択は、「家庭用と業務用の差別化、環境保護とコストのバランス」という特徴を示しており、主に2つの主流タイプに分かれており、さまざまな機器の機能ニーズに適応しています。
1.小型冷凍庫:冷媒の「安定優位性」
R134a(テトラフルオロエタン)は、現在の冷蔵庫(特に200L未満の容量のモデル)で最も主流の冷媒であり、70%以上を占めています。その核心的な適応優位性は3つの側面に反映されています。第一に、環境保護基準を満たし、ODP値が0であるため、オゾン層破壊のリスクを完全に排除し、世界的な環境規制の基本要求に適合しています。第二に、その熱力学的性能は適切であり、標準蒸発温度は-26.1℃で、冷蔵庫の高効率コンプレッサーと組み合わせることで、冷凍室の温度を安定して-18℃から-25℃まで達成できます。また、冷凍効率(COP)はR22より8%~12%高く、機器の消費電力を削減できます。 3つ目は、安全性が信頼でき、A1クラスの冷媒(無毒、不燃性)に属し、わずかな漏れが発生しても家庭環境に安全上の危険を引き起こさず、冷蔵庫内のプラスチック部品やコンプレッサー潤滑油との相性が良く、故障率が低いことです。
さらに、一部の中高級家庭用冷蔵庫では、天然冷媒であるR600a(イソブタン、炭化水素)が採用されています。R600aはODP値が0、GWP値がわずか3と、R134aよりもはるかに優れた環境性能を備えており、冷凍効率もR134aより5~10%高く、エネルギー消費をさらに削減できます。しかし、R600aはA3冷媒(高可燃性)に分類され、空気中の体積濃度が1.8~8.4%に達すると、裸火にさらされると爆発します。そのため、家庭用冷蔵庫での使用に限られており(充填量は50g~150gと厳しく制限されており、業務用機器に比べてはるかに少ない)、冷蔵庫には漏れ防止検出装置(圧力センサーなど)や防爆コンプレッサーを備える必要があり、コストがR134aモデルよりも15%~20%高くなるため、十分に普及していません。
2.業務用冷凍庫・大型冷蔵庫:低GWP冷媒の「段階的普及」
業務用冷凍庫(スーパーマーケットのアイランド型冷凍庫など)は、容量が大きく(通常500L以上)、冷凍負荷も高いため、冷媒に対する「環境保護」と「冷凍効率」に対する要求が厳しくなっています。現在、主流の選択肢は以下の2つに分かれています。
(1)HFC混合物:R404Aの「高負荷適応」
R404A(ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタンの混合物)は、業務用低温冷凍庫(-40℃急速冷凍庫など)の主流冷媒であり、約60%を占めています。その利点は、低温条件下での冷凍性能が優れていることです。蒸発温度が-40℃の場合、冷凍能力はR134aより25%~30%高く、冷凍庫の低温保管ニーズに迅速に対応できます。また、A1冷媒(無毒、不燃性)に属し、充填量は最大数キログラム(家庭用冷蔵庫の充填量をはるかに上回る)まで可能で、可燃性リスクを心配する必要がなく、大型冷凍庫の高負荷運転にも適応します。
しかし、R404Aの環境保護上の欠陥は徐々に顕在化してきています。GWP(地球温暖化係数)は3922と高く、高温室効果ガスに分類されます。現在、欧州連合(EU)をはじめとする各国では、R404Aの使用を制限する規制(例えば、2022年以降に新たに製造される業務用冷凍庫へのGWP2500を超える冷媒の使用禁止など)が制定されています。そのため、R404Aは徐々に低GWP冷媒に置き換えられつつあります。
(2)低GWPタイプ:R290およびCO₂の「環境代替品」
環境規制の強化を背景に、R290(プロパン)とCO₂(R744)が、さまざまなシナリオのさまざまなニーズに適応し、業務用冷凍庫の新たな選択肢となっています。
R290(プロパン):主に小型の業務用冷凍庫(コンビニエンスストアの横型冷凍庫など)に使用されています。ODP値は0、GWP値は約3で、環境保護性能が非常に高く、冷凍効率はR404Aより10%~15%高く、業務用冷凍庫の稼働エネルギー消費量を削減できます(業務用機器は1日に20時間以上稼働し、エネルギー消費コストの占める割合が高い)。ただし、R290はA3類冷媒(高可燃性)に属し、充填量は200g以内に厳密に管理する必要があります(そのため、小型冷凍庫に限られます)。また、冷凍庫には防爆型コンプレッサー、漏洩防止配管(銅ニッケル合金管など)、換気・放熱設計を採用する必要があります。現在、欧州のコンビニエンスストアの冷凍庫に占める割合は30%を超えています。
CO₂(R744): 主に超低温業務用冷凍庫(-60℃生物試料冷凍庫など)に使用されています。標準蒸発温度は-78.5℃で、複雑なカスケード冷凍システムを必要とせずに超低温保管を実現できます。ODP値は0、GWP値は1であり、かけがえのない環境保護機能を備え、無毒、不燃性でR290よりも安全性に優れています。ただし、CO₂の臨界温度は低く(31.1℃)、周囲温度が25℃を超えると「遷臨界サイクル」技術が必要になり、冷凍庫のコンプレッサー圧力が10~12MPaにも達するため、高強度ステンレス配管と高圧耐圧コンプレッサーの使用が必要となり、R404A冷凍庫よりも30~40%コストが高くなります。そのため、現在は主に環境保護と低温に対する要件が極めて高いシナリオ(医療用および科学研究用の冷凍庫など)で使用されています。
II. 冷媒の将来動向:低GWPと高い安全性が中心となる
世界的な環境規制(EUのFガス規制、中国のモントリオール議定書実施計画など)や設備技術の向上と相まって、冷蔵庫・冷凍庫の冷媒は今後、次の3つの大きなトレンドを示すでしょう。
家庭用冷蔵庫R600aはR134aを徐々に置き換えます。液漏れ防止・防爆技術(新型シーリングストリップ、自動液漏れ遮断装置など)の成熟に伴い、R600aのコストは徐々に低下し(今後5年間で30%低下すると予想)、高い環境保護性能と高い冷凍効率といったメリットが際立つようになります。家庭用冷蔵庫におけるR600aの割合は2030年までに50%を超え、R134aに取って代わり主流となることが予想されます。
業務用冷凍庫:CO₂とHFOsの混合による「デュアルトラック開発」 - 超低温業務用冷凍庫(-40℃以下)では、CO₂の技術的成熟度が継続的に向上し(高効率のトランスクリティカルサイクルコンプレッサーなど)、コストが徐々に低下し、2028年までにその割合が40%を超えると予想されます。中温業務用冷凍庫(-25℃~-18℃)では、R454C(HFOsとHFCsの混合、GWP≈466)が主流になり、冷凍性能はR404Aに近く、A2Lクラス冷媒(低毒性、低可燃性)に属し、充填量に厳しい制限がなく、環境保護と実用性のバランスが取れています。
安全基準の強化:「受動的な保護」から「能動的な監視」へ – 家庭用、業務用機器を問わず、将来の冷媒システムには、特にR600aやR290などの可燃性冷媒について、「インテリジェントな漏洩監視+自動緊急処理」機能(家庭用冷蔵庫のレーザー漏洩センサー、業務用冷凍庫の濃度アラーム、換気連動装置など)が一般的に装備され、技術的な手段で潜在的な安全上の危険を排除し、低GWP冷媒の全面的な普及を促進します。
III. コアシナリオマッチングの優先順位
さまざまなユーザーのニーズに合わせて、冷蔵庫の冷媒を選択する際には、次の原則に従うことができます。
家庭ユーザー:R600aモデルを優先(環境保護と省エネのバランス) – 予算に余裕があれば(R134aモデルより200~500元高い)、R600a冷媒搭載の冷蔵庫を優先的に購入しましょう。R600a冷媒搭載の冷蔵庫は、R134aモデルより消費電力が8~12%低く、環境にも優しい製品です。購入後は、冷蔵庫背面(コンプレッサーがある場所)を火気に近づけないように注意し、定期的にドアシールの密閉状態を確認して液漏れのリスクを軽減しましょう。
商用ユーザー:温度ニーズに応じて選択(コストと環境保護のバランス) - 中温冷凍庫(コンビニエンスストアの冷凍庫など)では、長期的な運用エネルギー消費コストが低いR290モデルを選択できます。超低温冷凍庫(急速冷凍装置など)の場合、予算に余裕があれば、環境規制の動向に沿っており、将来の段階的廃止のリスクを回避できるCO₂モデルが優先されます。短期的なコスト感度が懸念される場合は、性能と環境保護のバランスを取りながら、移行としてR454Cモデルを選択できます。
メンテナンスと交換:元の冷媒の種類を厳密に一致させてください。古い冷蔵庫や冷凍庫をメンテナンスする際は、冷媒の種類を恣意的に変更しないでください(例えば、R134aをR600aに交換するなど)。冷媒の種類によって、コンプレッサーの潤滑油や配管圧力に対する要件が異なるためです。混合使用は、コンプレッサーの損傷や冷凍機の故障につながる可能性があります。機器の銘板に記載されている種類に従って、専門家に冷媒を追加する必要があります。
投稿日時: 2025年8月29日 閲覧数:
